2007/08/13

裏はなさかじいさん

昔々、会津の小さな町に前田権兵衛という名の六十ばかりなるおじいさんとシロと呼ばれる老犬がいました。
権兵衛とシロは町中で評判になるほど仲が良かったほどでした。
いつも朝は人より早く起き
昼はせっせと働き
日がくれると少々の米と粟、味噌を食べ、あまり贅沢とはいえない暮らしをしていました。

そしてある日、権兵衛が農作業をしていると、シロが土を掘っているではありませんか。
権兵衛は悪戯でもしているのだろうと見て見ぬふりをしていました。
あまりにも長い間、シロは土を掘り続けていたので
権兵衛は少し気になったので近づいてみた
すると、地面が金色の小判が輝いているではありませんか。
権兵衛は辺りを見渡し、誰もいないことを確認をすると家に持ち帰りました。

いそいそと自宅に帰って、権兵衛は小判の数を数えてみるとなんと千両ほどありました。
そんなお金を手にしたことのない権兵衛は大変に喜びました。

しかし、良い話はそんなに続きませんでした。
実はシロの掘った小判は役人の小判だったのです。
その当時、金庫がなかったので役人は家の近くの土の中に埋めていたのです。
目撃者の証言でその時間には権兵衛と犬しかいなかったということで
権兵衛は重要参考人として奉行所に連行されてしまいました。
権兵衛が警察に拘束されている間に現場検証が行われ
土を掘った形跡が明らかに犬の仕業ということが解り
シロは役人に捕らわれてしまいました。

犯人はシロということになり、シロは処刑されてしまいました。
何故犬が犯人にされ、殺されたかというと
権兵衛には悪気がなく、罪の意識まったくなかったということもあり、戒めとしてシロは殺されたのです。
権兵衛は太郎が死んだことを知らされて、泣き崩れました。
それを見て可哀想に思った奉行人は権兵衛を釈放させてあげました。
権兵衛は家にまっすぐに帰ると、すでに日は暮れ、あたりはどこか寂しげな暗闇に取り囲まれていました。
死んでしまったシロに目をやり、抱きかかえ、外に出してあげました。
そして、燃やしました。
木の粉火が蛍のように飛び交い、空に舞あがる光景はシロの魂が空へと還っていくようでした。
しっかり焼かれたシロの骨はとても軽く、少し力を入れると粉々になるほどでした。
権兵衛は大きな形ある骨は地に埋め
粉々になった骨は壺に移し変えて、家に供えることにしました。

権兵衛は形式的には罪人ではないのですが、周りの目は冷ややかでした。
万屋(よろずや)に行ったのなら「盗みをするのなら、来ないでくれ」とまで言われてしまう始末でした。
世間の目とは些か冷たいものである。
間違いとはいえ盗みをしたものの、故意でない。
形式的には罪人でないのに、世間の目は罪人扱いに。
人間の目とはそんなものなのです。

権兵衛はシロを亡くした悲しみと彼に対する周りの人間の反応が
彼の精神を壊していきました。
そんな権兵衛は太郎の骨の粉を持ち、こう言いました。

「枯れ木に花を咲かせましょう!」

木に花が咲くことはなく
ただ、町中の笑いの種となり、笑いの花が咲いたとさ。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

おもろいぞー!!
もっと書けー!!!!

sato4 さんのコメント...

>oku
ありがとう!
いろいろ模索しながら、書いていきますわ~。